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いつの間にか「ゆず茶」がカフェの定番となっている。

これはいつのことからだろうか・・・。

従来カフェや喫茶店はコーヒーや紅茶を売り物にし、またアメリカ・ヨーロッパ志向であったが、ここ数年のカフェブームにおいては癒しやリラクゼーションを標榜とする時代の流行(はやり)とシンクロして日本茶、中国茶そして韓国伝統茶への注目が高まっている。

しかしながら韓国伝統茶といえば、まだまだ一般的にはゆず茶コーン茶高麗人参茶ぐらいしか馴染みがない。

そこで、キムチランドグループ鄭柱泰氏の夫人である辛永任(シン・ヨンイム)さんに、韓国伝統茶についていろいろ伺ってみた。
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韓国伝統茶とは・・・


【ADV:L'art de vivre】
 最近カフェではすっかり「ゆず茶」が定番となりましたが、韓国の方もゆず茶はよく飲まれるのですか?


【辛永任:シン・ヨンイム】
 秋に新鮮な柚子を選んで、家庭で作っていましたよ。
 実を四等分してから皮の白い部分とって薄く千切りにし、中身は種を取り出して汁を絞り、同量蜂蜜を入れてビンに漬け込みます。そうすると一週間くらいすれば果汁が出てくるので、この汁をを実と一緒にコップに入れ、熱い湯を注いで飲んだり、冷水に入れて飲んだりします。
 毎日は飲みませんが、何か祝い事がある時や、寒気を感じた時には欠かせません。

韓国伝統 ゆず茶

【ADV】
普段はどのようなものを飲まれるのですか?


【辛永任】
 韓国人はごはんのおこげが大好きで、昔はお釜の底に残ったおこげをに湯を加えて飲んでいました。スンニュン※1といいますが、日本の方が冷やご飯をお茶漬けにされるのに似ているかもしれませんね。電気釜が普及してからは食べる機会も減りましたが、おこげができる炊飯器も売られているほどです。またおこげ味のキャンディーもあるのですよ!

※1 今でも食堂で食事の最後に出されることもある。

 食事中でしたら、スンニュンの他にはコーン茶か麦茶かしら。
 最近では緑茶を飲む方も増えてきましたね。

 韓国にはいわゆる茶葉から作る緑茶(ノクチャ)、漢方薬の材料から作る湯茶(タンチャ)、柚子や花梨、ナツメなどから作る果実茶、それに食後の消化を促進する水正果(スジョンガ)やシッケ※2などを総称して『茶』と呼んでいます。

※2 ご飯粒と麦芽の粉を水に浸した上澄みでねかしてつくる飲料。生姜汁や柚子の砂糖漬けを入れたりもする。缶タイプのものも販売されている。

韓国伝統茶 シッケ

 韓国で緑茶の栽培が始まったのは9世紀ごろです、仏教とともに中国から伝わってきたそうです。
 しかし王朝時代に入り、国教として儒教が広まるにつれ、緑茶の文化は排斥され、長らく廃れていました。
 韓国で緑茶を飲む習慣が見直されきたのは、ここ20年ぐらいなのですよ。

 そんなことがあったためか、茶葉を使わない茶が発達したのかもしれません。

 伝統茶はいずれも「薬食同源」の思想に基づくものなので、安心してご利用いただけます。

 また10数年ぐらい前からソウルやプサンに伝統茶を飲ませる茶房が復活し、若い人たちにも見直されてきています。


【ADV】
もう少し具体的にそれぞれの伝統茶の種類と味わいを教えていただけますか?


【辛永任】
 喜んで(笑)・・・。でもたくさんあるので、私がぜひともお奨めしたいものをいくつか。

 それでは、まずは一番人気のゆず茶から。
 韓国語では「ユジャチャ」と発音し、蜂蜜や砂糖に漬けた柚子をお湯で割って飲む甘いお茶です。ビタミンCがいっぱいの柚子の甘酸っぱい香りが心を落ち着かせてくれます。温かくして飲むのが一般的ですが、夏場は冷たくすると飲みやすいですね。お菓子や料理にも使えるのでとても重宝します。

 次に雙和茶(サンワチャ)。
 日本ではあまり馴染みがありませんが、韓国では人気の伝統茶です。桂皮・甘草・熟地黄・芍薬など9種類の韓方をじっくりと時間をかけて煮出したお茶で、少し甘苦い味わいです。

 そして五味子茶(オミジャチャ・オミザチャ)
 干したオミジャ(五味子)の実から作るお茶です。名前の通り、甘、すっぱい、苦い、辛い、そしてしょっぱいの5つの味を持っています。最近では「宮廷女官 チャングムの誓い」のイ・ヨンヘさんが愛飲しているお茶として人気が高まっています。

 その他、ナツメ茶(テチュチャ)、花梨茶(モガチャ)、梅茶(メシルチャ)、ザクロ茶生姜茶、トングレ茶、よもぎ茶)、柿の葉茶などまだまだたくさんあります。

代表的な韓国伝統茶。 左からゆず茶、ナツメ茶、生姜茶、花梨茶
お茶もやはり薬食同源や五行思想に基づくもの


【ADV】
先ほど教えていただいた五味子茶(オミジチャ・オミザチャ)が個人的には気になったのですが・・・。


【辛永任】
 五味子茶は人気の韓国ドラマ「宮廷女官 チャングムの誓い」で紹介されてから、ご注文が殺到している大人気商品です。

 さて、主人のインタビューにも出ていましたが、韓国人は「五味五色」をとても大切にします。

 繰り返しになりますが、「五味五色」とは東洋の五行思想(五行説)に基づくもので、「木・火・土・金・水」の5つの「行」を基本とし、季節は順に「春・夏・土用(季節の変わり目)・秋・冬」(五時)、人の内臓は順に「肝・心・脾・肺・腎」(五臓)、人の感覚は順に「目・耳・鼻・口・皮膚」(五感)、方角は順に「東・南・中央・西・北」(五方)といったように、季節や自然、身体、そして方角等あらゆるものを「五行」にあてはめて考えます。

 「五味五色」の場合、五行の「木・火・土・金・水」の順に、「辛・甘・酸・鹹(しょっぱい)・苦」(五味)、「青・赤・黄・白・黒」(五色)をあてはめます。

 韓国では食卓に欠かさず5つの色の食材を、5種類の味に調理した料理を並べ、栄養バランスのとれた健康的な食生活を過ごせるようにしています。

 例えば皆様も良くご存知のピビンバを思い浮かべてください。

 コチュジャンの辛さと甘さ、ナムルなどの味付けとして酸味と塩味、そして野菜の苦味が五味となり、そして青はほうれん草、赤はコチュジャン、黄は卵、白はご飯、黒は肉や海苔という風に五色でもあるわけです。

 冷麺唐辛子やコチュジャンの辛さと甘さ、スープの塩味と酸味、そしてキュウリの苦味、色は青がキュウリ、赤はキムチ、黄は卵やマスタード、白は梨、そして黒は蒸し豚というふうに・・・。

目にも美味しい五味五色 ビビンバ 五味五色の美味しさ 冷麺

【ADV】
まさにおっしゃる通りですね!今までそのようなことを意識して食べたことがありませんが、本当にバランスの良い食事であることがよくわかります。


【辛永任】
 宮廷料理の「九節板」(クジョルパン)はご存知ですか。いわば韓国版クレープといった料理ですが、9つに仕切られた器に千切りにした8つの具とそれを包んで食べるための皮(小麦粉を水で溶き、焼いたもの)を盛り合わせます。
 青がキュウリや春菊、赤はニンジン、黄は薄焼き卵やタケノコ、白はダイコン、黒は牛肉や海苔という風に五色をそろえ、それらを皮で巻いて、甘酸っぱいタレにつけて食べます。

韓国伝統料理 九節板(クジョルバン)

 現在の韓国料理の元となった李朝時代の宮廷料理ですが、このような伝統が今に至るまで綿綿と受け継がれているのです。


【ADV】
ということは、伝統茶も同じ思想に基づいているわけですね!


【辛永任】
 もちろん。先ほどご紹介した五味子茶がそうであることは言うまでもありませんが、ゆず茶やなつめ茶も飲んで美味しいだけではなく、からだに良いことを前提として作られているのですよ。

 韓国でも欧米発のファーストフードが浸透し、若い人たちは好んで食べているようですが、長年培ってきた伝統も大切にしてほしいものです。

 「薬食同源」や「五味五色」は毎日の食に対する思想なので、素材にこだわることなく、和食やフランス・イタリア料理にも簡単に取り入れられるはずです。

韓流ブーム、そしてご自身のことなど・・・


【ADV】
ところで、シンさんご自身が毎日の食生活で気をつけておられることはありますか?


【辛永任】
 基本的にはどんなに忙しくとも、時間のある限り料理は自分で作ったものを食べるようにしています。素材へのこだわりはもちろんのこと、何かひと手間かけた料理を家族と共に食べることで、作り手の愛情が伝わり会話も弾みます。

 今は親元を巣立った子供たちがなんとかまっとうに育ってくれたのも、些細なことですが毎日の食事をきちんとしていたおかげではと思っています。

 あと個人的には甘いものや冷たいものも控えるようしています。


【ADV】
話は変わりますが、韓流ブームについてはどのように感じておられますか?


【辛永任】
 今は日本に住んでいるのであまり政治的な話はしたくはないのですが、長くつらいわだかまりがようやく氷解しかかっている現状はとても喜ばしいことだと思います。

 政治家にはそれぞれの思惑があるので、それゆえ意図的に不愉快な発言や行動をとることもあるようですが、われわれ庶民レベルでの草の根交流が活発になると、どのような情勢になってもその信頼や友情は決してゆるぎえない堅固なものになりうると信じています。

 そういう点において、冬ソナやヨン様、そしてチャングムが果たした影響は本当に大きかったのでしょうね!

 言葉や習慣が違っても、番組を通じてユジンやミニョンの一挙手一投足を共に喜び、悲しみあえたこと。
 大げさな話ですが、韓国にも日本と何ら変りのない生活があることを初めて知っていただけたのではないでしょうか?
 それ以前というと、焼肉を食べに行ったり、ショッピングやレジャーをすることでしか韓国を見ていただいていなかったような気もしますので・・・。

 私どもの店には、キムチだけではなく韓国の食に関するあらゆる商品を取り揃えています。

 韓流ブームにあわせて新たなお客様も随分と増えましたが、これが一過性のものにならないよう、「薬食同源」や「五味五色」といったキーワードを通じてまだまだ知らざれる韓流の食の提案を行なっていきたいですね。


【ADV】
有難うございました。私もヨン様、ビョン様にうつつをぬかしているだけではなく、韓流の食の思想を普段の食に取り入れられるよう心がけます。

【編集後記】
 穏やかな笑顔と口調から自ずと優しいお人柄がにじみ出てくるシン・ヨンイムさん。
 インタビューの後で、日本中を飛び回っているご主人の鄭柱泰氏の体調管理が一番気になるとるとおっしゃっておられました。
 お二人のお子さんはすでに親元を巣立ち、長男は徴兵中、次男は留学中とのこと。
 しかしながら、皆がそれぞれ元気に活躍できているのも、韓国の栄養バランスがとれたからだに優しい食生活の賜物と、自信をもっておっしゃっておられたことが印象的でした。
インタビュー・編集:L'art de vivre
2005-2013© 無断転載・引用を禁ず
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